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社内の誰がコーポレートサイトの正しい情報管理するか。AI時代の情報ガバナンス

著者:久保木肇(株式会社ジム 代表取締役。2000年からWebサイト制作に従事、企業サイトの設計・制作・運用歴26年)

この記事の対象:企業の経営者、役員、管理部門の責任者。会社情報の管理体制を決める立場の方に向けて書いています。表記ゆれの棚卸しや構造化データの実装手順を知りたいWeb担当者の方は、担当者向けの「AIに正しく『会社』を理解させる。エンティティ設計の実務」からお読みください。


結論を先に3つ。会社情報がAIに誤って伝わる原因の大半は、技術ではなく体制です。社名の表記、所在地、事業内容、代表者名は、総務・広報・人事・営業がそれぞれ別の媒体に別々に書いていて、全体を見ている人がいません。「会社情報の正はここにあり、変更はこの人が全媒体に反映する」という情報オーナーを1人決めることが、構造化データの実装より先に必要です。

この記事では、会社情報が散らばる場所と担当部署の対応、ズレが起きる典型的な場面、情報オーナーの役割と年間カレンダー、会社の規模別の現実的な体制を説明します。

会社情報はどこに散らばっているか

AIは御社のサイトだけを読んで会社を理解するのではなく、Web上のあらゆる記述を突き合わせて「この会社はこういう会社だ」という像を作ります。1か所でも古い情報や違う表記があれば、AIはそれを答える可能性があります。問題は、その「あらゆる記述」を書いている部署がバラバラなことです。

会社情報が載る場所通常の担当部署更新のきっかけ
コーポレートサイトの会社概要広報、またはWeb担当リニューアル時、指摘があったとき
採用サイト・求人媒体人事募集を出すとき
Googleビジネスプロフィール誰も担当していないことが多い開設時のみ
登記情報・法人番号公表サイト総務・法務登記変更時
業界団体・商工会議所の名簿総務、または入会時の担当者入会時のみ
プレスリリース配信サービスの会社概要広報配信のたび(テンプレをコピー)
SNSの公式プロフィール広報、またはマーケティング開設時のみ
取引先の導入事例・パートナー一覧営業(先方が管理)先方次第
帝国データバンク等の企業情報総務(調査対応時)調査時
営業資料・会社案内PDF営業改訂時

この表を自社に当てはめると、「担当部署が空欄になる行」と「更新のきっかけが開設時のみの行」が見つかります。そこが、AIに古い情報が渡る経路です。

ズレが起きる典型的な場面

役員交代。サイトの会社概要は直すが、業界団体の名簿と求人媒体の「代表者」欄は前任者のまま。AIが代表者を聞かれると、複数の名前が候補に出ます。

本社移転。サイトとGoogleビジネスプロフィールは直すが、プレスリリースのテンプレと営業資料が旧住所のまま。数か月後に配信されたリリースが旧住所で公開され、AIがそれを新しい情報として拾います。

事業の追加・撤退。新事業のページはサイトに追加されるが、会社概要の「事業内容」欄は更新されず、求人媒体の事業説明は5年前のまま。AIは「主事業は何か」を判断できず、古い事業を主事業として答えます。

社名変更・表記変更。「株式会社」の前後、英字表記、略称の扱いが媒体ごとに違い、AIが同名の別会社と混同します。

当社でも同じことが起きていました。2026年9月に自社サイトを確認したところ、トップページのタイトルは「デザイン会社」、meta descriptionは「Web制作、Web運用、ブランディング、動画」、会社概要の事業内容は「Webデザイン、映像制作、グラフィックデザイン、展示会装飾デザイン」、サービスページには広告運用とライティングがあり、4か所で会社の説明が違っていました。所在地も「神楽坂」と「山吹町」が混在していました。原因は[要確認:各ページを別々の時期に別々の担当者が書き、全体を照合する役割がなかった、で合っているか]。14名の会社でもこうなります。

情報オーナーの役割

情報オーナーは、会社情報の「正」を1か所に持ち、変更が起きたときに全媒体への反映を完了させる責任者です。作業を全て自分でやる必要はなく、反映されたことを確認する責任を持ちます。

役割は4つです。

  1. 「会社情報の正」を1枚の文書に持つ。社名(正式・英字・略称)、所在地(ビル名・階まで)、設立年と創業年、代表者、資本金、従業員数、事業内容の1文、電話番号、公式URL、公式SNSのURL。この文書が全媒体の元になります
  2. 上の対応表を自社版にして、媒体ごとの担当者と更新方法を書いておく
  3. 変更が起きたら、対応表の全行に反映されたことを確認する
  4. 年に一度、全媒体を照合し、AIに自社を聞いて回答を記録する

「正」の文書と対応表は、A4で2枚程度です。作るのに半日、維持は年に数時間で済みます。

年間カレンダー

変更が集中する時期に合わせて、確認の時期を固定します。

時期確認すること
株主総会・役員改選の後代表者・役員情報を全媒体で照合
決算確定後資本金・従業員数・売上規模の記載を更新
年度初め事業内容の1文を見直し、新事業・撤退を反映
四半期に一度主要なAIに自社を聞き、回答を記録(5分)
移転・社名変更が決まったとき対応表の全行に期日を入れて反映を管理

会社の規模別の現実的な情報オーナー

10人規模の会社では、経営者本人が情報オーナーです。会社情報を変える決定をするのが経営者なので、対応表を持って反映を確認するところまで自分でやるのが最も確実です。当社もこの体制にします。

100人規模の会社では、広報責任者が情報オーナーになり、人事・総務・営業の各担当者を対応表に割り当てます。総務が登記、人事が求人媒体、営業が取引先の掲載を受け持ち、広報が照合します。

1,000人規模の会社では、総務(登記・公式情報の正)と広報(対外発信の反映)の二重体制にし、グループ会社や海外拠点の会社情報も対応表に含めます。この規模になると、会社情報の変更を稟議のワークフローに組み込み、変更の承認と同時に対応表の各担当者へ通知が飛ぶ仕組みが必要です。

どの規模でも共通するのは、Web担当者や制作会社に情報オーナーを任せないことです。彼らはサイトの中は直せますが、求人媒体や業界団体の名簿は直せません。

まとめ

AIに会社情報が正しく伝わるかどうかは、構造化データの前に体制で決まります。会社情報はサイト、求人媒体、登記、業界団体、プレスリリース、SNS、取引先の掲載に散らばり、担当部署が違うので、誰かが全体を持たない限りズレ続けます。「正」を1枚の文書に持ち、媒体ごとの対応表を作り、変更のたびに全行への反映を確認する情報オーナーを1人決める。10人の会社なら経営者本人、100人なら広報責任者、1,000人なら総務と広報の二重体制。当社も自社の不整合を機に、この体制にします。

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株式会社ジムは、1981年の創業から45年、2000年からWebサイトの制作に携わり、2013年からコーポレートサイト全体の設計・制作・運用を続けてきました。東証プライム上場企業を含む190社の企業サイトに携わり、継続取引歴10年以上の企業も9社あります。制作だけでなく、GA4・Search Consoleによる解析、広告運用、コンテンツ制作まで同じチームで担当しています。

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  • v1.0(2026年9月21日)初版。当社サイトの記述は2026年9月21日時点の公開ページに基づく

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