AI時代、コーポレートサイトの役割はどう変わるか
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著者:久保木肇(株式会社ジム 代表取締役。2000年からWebサイト制作に従事、企業サイトの設計・制作・運用歴26年)
この記事の対象:企業の経営者、役員、事業責任者。自社のコーポレートサイトの予算と方針を決める立場の方に向けて書いています。実務の手順を知りたいWeb担当者の方は、担当者向けの「AI時代のコーポレートサイトに求められる5つの条件」からお読みください。
結論を先に3つ。第一に、コーポレートサイトの役割は「人に読ませるパンフレット」から「AIと人が参照する、会社の一次情報源」変わりました。第二に、顧客も求職者も、サイトを訪問する前にAIの要約で御社を判断し、要約に出なかった会社は比較される前に消えます。第三に、経営として決めるべきことは、会社情報の「正」を誰が持つか、AIに情報を出すか出さないか、年に一度の棚卸しを誰の責任にするか、の3点です。
この記事では、なぜ役割が変わったのかを当社サイトの実測で示し、変化した3つの役割、放置したときに起きること、経営が決めるべき3つの事項を説明します。
何が変わったのか。比較検討の「前工程」がAIに移った
BtoBの取引先選びは、これまで「検索して、複数の会社のサイトを開いて、比較して、問い合わせる」という順番でした。今は最初の2つの工程が変わっています。担当者はChatGPTやGemini、GoogleのAI Overviewsに「○○業界で△△に強い会社は」と聞き、返ってきた要約を土台にして、気になった会社だけを深掘りします。御社のサイトが開かれるのは、AIの要約に載った後です。
当社サイト(gym-ts.com)の実測を示します。2025年9月から2026年8月の12か月で、AIサービスから直接来た訪問は113セッション、全体の0.6%でした。数としてはまだ小さい。ただし、Gemini経由は前半6か月の14セッションから後半6か月の44セッションへ約3倍に増えています。さらに重要なのは、この数字は「AIの要約を見てクリックした人」だけを数えている点です。要約を読んで判断し、サイトを訪問しなかった人、社名を覚えてあとで検索した人は、この数字に入っていません。
つまりコーポレートサイトは、訪問されないまま要約され、比較され、判断される場所になった。これが変化の本質です。
コーポレートサイトの3つの役割と、それぞれの変化

役割1:集客の入口から、AIの参照元へ
これまでのコーポレートサイトは、検索で見つけてもらい、訪問してもらう「入口」でした。今後は、AIが御社について答えるときの「参照元」としての役割が加わります。AIは御社のサイトを読み、Web上の他の記述と突き合わせて「この会社はこういう会社だ」という像を作ります。サイトの情報が曖昧だったり古かったりすれば、AIはその曖昧な像のまま顧客に答えます。
役割2:会社案内から、信用の裏付けへ
パンフレット的な会社案内は、読んだ人に良い印象を持ってもらうことが目的でした。AIは印象では動きません。AIが引用するのは「切り出しても意味が通じる、根拠のある事実」です。創業年、取引社数、継続年数、対応業種、担当者の在籍年数といった数字と事実が、御社の信用をAI経由で顧客に伝える材料になります。たとえば「お客様に寄り添います」という文は、AIにとっては存在しないのと同じです。
役割3:作って終わりから、更新され続ける台帳へ
これまでは数年に一度リニューアルすれば済みました。今後は、役員交代や移転、事業の追加のたびに、サイトと社外の掲載情報を揃え続ける必要があります。AIは御社のサイトだけでなく、求人媒体、業界団体の名簿、Googleビジネスプロフィールも見ています。1か所でも古い情報が残っていれば、AIはその情報に基づいて答える可能性があります。
放置すると何が起きるか
AIの回答に御社が出ない場合、顧客は御社を知らないまま競合を比較します。営業が接触する前に候補から外れているので、失注として数字にも出ません。
AIが古い情報や間違った情報を答える場合は、さらに厄介です。旧住所、退任した役員名、やめた事業が回答に出て、顧客はそれを事実として受け取ります。訂正の機会はありません。
採用ではすでに数字が出ています。株式会社LANYが2026年6月に公開した調査(過去1年に転職活動をし、対話型AIで企業を調べた25〜45歳の111名が対象)では、92.8%がAIの回答で企業のネガティブな情報に接触し、87.4%がAIの回答をきっかけに応募や選考を辞退した経験があると回答しています(出典:LANY「【転職×AI 実態調査】87%がAIの回答で選考辞退」 https://www.lany.co.jp/lany-llmo-lab/job-candidate-ghosting )。回答者はAIで企業を調べた人に限られ、サンプルも111名なので、求職者全体の傾向として読むのは早計ですが、採用担当者が関与できない段階で候補者が離脱するという構造は、営業でも同じように起きていると考えるのが自然です。
当社の取引先2社について、実際にAIに「どんな会社か」を聞いてみました。
A社(レンタル業、従業員40名)について
AI(claude)に問い
「株式会社A社はどんな会社ですか。事業内容、所在地、従業員規模、強みを教えてください」

回答
社名で調べただけでは同名の別会社4社と混同され、所在地を添えるまで特定できませんでした。特定後も、会社概要の事業内容が定款どおりの十数項目の列挙で、トップページの主力事業と一致していないため、聞き方によって「何の会社か」の回答が変わりました。
さらに社名を伏せて「都内で法人向けに●●●をレンタルをしている会社」と聞くと、候補に挙がったのは●●●レンタル専業の数社で、A社は入りませんでした。A社のサイトは社名で聞けば正しく答えられる情報を持っていますが、主力事業が何かがページ全体で一貫しておらず、比較記事や業界サイトからの言及もないため、社名を知らない人の質問には登場しません。
注)2026年9月22日調査、AIはclaudeの他にchatGPTでも調査し、同様の回答を確認。
B社(ソフトウェア開発、従業員50名)について
AI(claude)に問い
「株式会社B社はどんな会社ですか。事業内容、所在地、従業員規模、強みを教えてください」

回答
B社(●●●の開発・販売、従業員50名超)は、事業内容、拠点、沿革、親会社まで正確に回答され、「40年以上の歴史を持つ●●●(ソフトウェア名)の会社」と説明されました。1つのドメインに会社情報がまとまり、沿革が年表で明記され、東証プライム上場の親会社の名前が信頼の裏づけになっていたためです。ただし強みは「国内トップクラス」というサイトの表現がそのまま返され、導入社数などの数字は説明されませんでした。
さらに社名を伏せて「●●●の開発・販売をしている会社はどこか」と聞くと、B社は候補10社ほどの中に入りました。プレーヤーが10社前後と少ない分野で、製品名と会社名が同じ、業界ポータルにも製品が登録されているためです。ただし、ある製品比較サイトには載っておらず、AIが参照するサイト次第で名前が消えることもありました。
注)2026年9月22日調査、AIはclaudeの他にchatGPTでも調査し、同様の回答を確認。
経営者が決めるべき3つのこと

技術的な対応はWeb担当者や制作会社に任せられます。ただし次の3つは、経営者が決めないと現場が動けません。
1. 会社情報の「正」を誰が持つか
社名の表記、所在地、事業内容の1文、代表者名、設立年。これらは総務、広報、人事、営業がそれぞれの媒体に別々に書いていて、誰も全体を持っていないのが一般的です。だから表記揺れが発生します。「会社情報の正はここにあり、変更はこの人が全媒体に反映する」という役割を1人に割り当ててください。10人の会社なら経営者本人、100人なら広報責任者が現実的です。
2. AIに情報を出すか、出さないか
AIのクローラーを許可するか拒否するかは、方針の問題です。コーポレートサイトの会社情報や事業内容は、知られるほど価値がある情報なので、原則は許可です。一方、独自の調査データや有料コンテンツは、学習には使わせず検索・回答には使わせる、という中間の選択もあります。ここは「知られると損をする情報があるか」「AIの回答に出てほしいか」の2軸で決められます。決めずに放置すると、制作会社の初期設定がそのまま御社の方針になります。
3. 年に一度の棚卸しをする責任者を立てる
コーポレートサイトと社外の掲載情報を年に一度照合し、古い情報を直す。作業自体は数日で終わりますが、あらかじめ責任者を立てないと永遠に行われません。決算期や株主総会後など、役員情報が確定するタイミングに合わせて、担当者と期日を決めてください。
リニューアルは必要か
ここまで読んで「サイトを作り直さなければ」と考える必要はありません。役割の変化に対応するために必要なのは、AIが読める技術的な土台の確認、会社情報の一貫性、切り出しても意味が通じる文章、根拠となる事実、更新の仕組みの5つで、その多くは既存のサイトの部分的な修正で済みます。デザインを刷新しても、AIの参照のされ方は変わりません。全面リニューアルが必要になるのは、CMSの保守が切れている、本文がJavaScriptでしか表示されない構成になっている、情報設計が今の事業と乖離している、のいずれかに該当する場合です。投資判断の考え方は、別の記事で扱います。
まとめ
コーポレートサイトは、人に読ませる場所から、AIと人が参照する会社の一次情報源に変わりました。顧客も求職者も、訪問する前にAIの要約で御社を判断します。要約に出ない会社は比較の土俵に乗らず、古い情報が出れば訂正の機会なく信用を失います。対応の大半は現場に任せられますが、会社情報の正を誰が持つか、AIに出すか出さないか、年次の棚卸しを誰の責任にするか、の3つは経営が決める事項です。当社サイトのAI経由の訪問はまだ全体の1%未満ですが、半年で3倍になりました。数字が大きくなってから決めるのでは、比較の土俵に残れません。
30分で、御社がAIにどう説明されているかをお見せします
株式会社ジムは、1981年の創業から45年、2000年からWebサイトの制作に携わり、2013年からコーポレートサイト全体の設計・制作・運用を続けてきました。東証プライム上場企業を含む190社の企業サイトに携わり、継続取引歴10年以上の企業も9社あります。制作だけでなく、GA4・Search Consoleによる解析、広告運用、コンテンツ制作まで同じチームで担当しています。
ご希望の企業には、主要なAIが御社をどう説明しているか、競合と比べてどう出るか、サイトの技術的な土台に問題がないかを、30分の打ち合わせで数字と画面でお見せします。リニューアルありきの提案はしません。部分的な修正で済むなら、その範囲でお見積りします。下記フォームからお問い合わせください。

改訂履歴
- v1.0(2026年9月21日)初版。計測データはGA4(gym-ts.com、2025年9月1日〜2026年8月31日)。採用に関する調査数値は株式会社LANY「採用マーケティングとしてのLLMOガイドブック」(2026年5月)に基づく