コラム

プロンプトで激変!クリエイティブAI生成の力を120%引き出す「プロンプトエンジニアリング」入門

はじめに:AIは”魔法の箱”じゃない!カギは「伝え方」にあり

前回の記事では、数あるAIツールの中から、あなたの目的に合った「相棒」を見つけるための比較レビューをお届けしました。お気に入りのツールは見つかりましたでしょうか?

しかし、いざツールを使い始めてみると、こんな壁にぶつかっていませんか?

「なんだか、思った通りの画像が出てこない…」 「AIの答えが、いつも曖昧で当たり障りのないものばかり…」 「まるで”ガチャ”を引いているみたいで、クオリティが安定しない!」

その悩み、実はあなただけではありません。多くのクリエイターが同じ道を通ります。 なぜなら、高性能なAIも、それ自体が私たちの心を読んでくれる”魔法の箱”ではないからです。AIの力を最大限に引き出すためには、私たち人間側からの的確な「伝え方」、すなわち「プロンプト」が不可欠なのです。

そして、そのAIへの指示を最適化し、望む結果を引き出す技術こそが、今回ご紹介する「プロンプトエンジニアリング」です。

難しく聞こえるかもしれませんが、心配はいりません。この記事では、AIとの新しい対話術であるプロンプトエンジニアリングの基本から、今日からすぐに使える具体的なテクニックまで、2025年8月26日現在の最新情報を踏まえ、分かりやすく解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたはAIを自在に操る鍵となる言葉を手に入れているはずです。クリエイティブなデザインやコンテンツ制作の可能性が、ここから大きく広がります。

 

プロンプトの基本マインドセット:AIを優秀な「新人アシスタント」として捉えよう

具体的なテクニックに入る前に、最も重要な心構えについてお話しします。それは、AIを「非常に優秀で素直だけれど、まだあなたの仕事の文脈を全く知らない新人アシスタント」として捉えることです。

このアシスタントに良い仕事をしてもらうには、どうすればいいでしょうか?

【1】具体的かつ明確に指示する
「いい感じによろしく!」では伝わりません。「この資料を、30代のクライアント向けに、丁寧かつ専門的なトーンで、3つのポイントに要約して」と具体的に指示する必要があります。曖昧さはAIにとって最大の敵です。

【2】背景と文脈を伝える
なぜその作業が必要なのか、どんな目的があるのかを伝えることで、アシスタントは指示の意図を汲み取り、より質の高いアウトプットを実現してくれます。「クライアントへの提案で使うから、ポジティブな印象を与えたい」といった背景情報が、AIの判断を助け、作業の効率も向上します。

【3】一度で完璧を求めず、対話を重ねる
最初の指示で100点満点の成果物が出てくることは稀です。出てきたアウトプットに対して、「もう少し柔らかい表現にして」「この要素を追加して」とフィードバックを重ねることで、理想の形に近づけていく。この「対話と改善のプロセス」こそが、プロンプトエンジニアリングの神髄です。

この3つのマインドセットを持つだけで、あなたのAIとのコミュニケーションは劇的に改善されるでしょう。

 

【画像生成編】狙ったビジュアルを創り出すための5つの構成要素

画像生成AIに「こういう絵が欲しい!」という漠然としたアイデアを伝えるのは至難の業です。しかし、イメージを以下の5つの要素に分解してプロンプトを構築することで、AIへの指示が驚くほど明確になり、望んだデザインコンテンツの生成が可能になります。

 

【1】主題
主題は、「何が」描かれているか。最も重要な絵の核となる部分です。
例:若い旅人とその犬, サイバーパンクな猫のバリスタ

【2】背景
背景は、主題が「どこに」いるか。世界観を決定づけます。
例:広大な谷を見下す草の丘の上, ネオンサインのある未来的なカフェ

【3】構図
 構図は、「どのように」見せるか。カメラワークを指示するイメージです。
例:広角撮影, 顔のアップ, 下からのアングル

【4】スタイル
スタイルは、「どんなタッチで」描くか。絵の印象を決定づける最も重要な要素の一つです。
例:写真のようにリアル, デジタルペインティング, 魅力的な絵本のイラスト, アメコミ風

【5】雰囲気・照明
雰囲気・照明は、「どんな光と空気感で」描くか。絵の感情をコントロールします。
例:映画のような照明, 柔らかい朝の光, 神秘的な霧, 平和な雰囲気

これらを組み合わせることで、「公園で走る犬」という曖昧な指示が、「主題: ボーダーコリーが、背景: 晴れた公園で、構図: 空中でフリスビーをキャッチするダイナミックなアクションショット。スタイル: 写真のようにリアルで、雰囲気: 速いシャッタースピードのエフェクト」といった、AIが理解しやすい具体的な指示テキストに変わるのです。

 

【コラム】プロンプトは英語?日本語?2025年現在の最適解は

「プロンプトは英語で書くべき?」これは非常によくある質問です。

結論から言うと、「最新の主要AIでは日本語でも非常に高品質な結果が得られるが、状況によっては英語が有利な場面も依然として存在する」というのが2025年現在の正確な答えです。

かつてはAIの学習データが英語中心だったため、「英語の方が有利」が定説でした。しかし、GPT-4oやGemini 1.5 Proといった最新の大規模モデルは日本語の理解能力が飛躍的に向上し、多くの場面で英語と遜色ないアウトプットを生成します。

では、英語が有利な場面とは何でしょうか? 第一に、世界中のユーザーが共有している優れたプロンプトやテクニックのほとんどは英語で書かれているため、それらを参考にしたい場合に有利です。第二に、非常に専門的な、あるいはニッチな画材やアーティストのスタイルを指示する際、英語の方がAIの学習データと合致しやすく、意図通りの結果を得やすいことがあります。

おすすめの使い分けは、「まずは高品質な日本語で試す。それで十分な結果が得られることが多い。もし、さらに特定のスタイルを追求したい場合や、海外のプロンプトを参考にしたい場合に、翻訳ツールを併用して英語を試してみる」というアプローチです。

 

【文章生成編】意図を的確に伝える4つのステップ

 

文章生成AIは非常に賢いですが、私たち人間に代わって意図を正確に汲み取ってもらうには、いくつかのコツが必要です。以下の4つのステップでプロンプトを構成することで、AIはあなたの優秀なライティングパートナーになります。

(ここに挿入画像2:4つのステップ(役割、目的と文脈、出力形式、制約条件)が階段状に配置されたイラスト)

【1】役割を与える
プロンプトの最初に「あなたは〇〇です」と役割を指定することで、AIの思考の方向性とアウトプットのトーンが定まります。これは非常に効果的なテクニックです。
例:あなたはプロのコピーライターです。
例:あなたは経験豊富なマーケティングコンサルタントとして振る舞ってください。

【2】目的と文脈を明確に
何のために、誰に向けた文章なのかを具体的に伝えます。
例:30代の忙しいビジネスパーソンをターゲットにした、新しい缶コーヒーの広告用キャッチコピーを考えてください。
例:目的は、商品の「持続する集中力」と「すっきりした後味」という特徴を魅力的に伝えることです。

【3】出力形式を指定する
どのように回答してほしいかを明確に指示します。これにより、後工程の作業が格段に楽になります。
例:多様なパターンを5つ提案してください。
例:箇条書きで、それぞれのキャッチコピーに簡単な解説を加えてください。
例:フレンドリーかつ、信頼感のあるトーンで記述してください。

【4】制約条件を加える
必要に応じて、文字数や含めてほしくない言葉などの制約を加えます。
例:各キャッチコピーは20文字以内にしてください。
例:専門用語は避けて、誰にでも分かりやすい言葉でお願いします。

これらのステップを踏むことで、「キャッチコピー考えて」という大雑把な指示が、AIにとって非常に分かりやすく、質の高いコンテンツを生成しやすい、優れたプロンプトに進化します。

 

実践!プロンプト改善クリニック (Before & After)

 

理論が分かったところで、実際にプロンプトを改善するとアウトプットがどれだけ変わるのか、具体的な事例を見てみましょう。

 

【画像生成編】「AI任せ」からのステップアップ

 

Beforeプロンプト
公園でフリスビーを追いかけるボーダーコリー

「公園でボールを追いかけるボーダーコリー」という指示から、AIが「こちらに向かって走ってくる犬」という一般的で最大公約数的なイメージを生成しています。犬の描写は正確で、画像としての品質は十分に高いです。しかし、動きは平凡で、背景や光の当たり方も特に指定がないため、良くも悪くも偶然性に頼った「AI任せ」の結果と言えます。

Afterプロンプト(改善後)
晴れた公園で、ボーダーコリーが空中でフリスビーをキャッチするダイナミックなアクションショット。速いシャッタースピードのエフェクト、写真のようにリアル、高精細な毛並み、ピントが合っている。

こちらは「空中でボールをキャッチするダイナミックなアクションショット」「速いシャッタースピード」という、より具体的な指示が明確に反映されています。犬がジャンプし、ボールを捉えるまさにその「決定的瞬間」が切り取られています。また、「ピントが合っている(focused)」という指示により、背景が美しくボケて犬が際立ち、写真としての完成度が格段に上がっています。

 

この2枚の差は、単なる品質の良し悪しではありません。

  • Beforeは「AIにテーマを与えて、AIが良いと思う絵を描いてもらった」結果です。
  • Afterは「クリエイターが頭の中に描いた特定の瞬間を、AIというカメラマンに指示して撮影させた」結果です。

Afterのプロンプトが優れているのは、偶然性を排除し、クリエイターの「こうしたい!」という具体的な意図をデザインに落とし込んでいる点にあります。この「意図の再現度」こそが、プロンプトを詳細にすることの最大の価値であり、Before/Afterの最も大きな違いなのです。

 

 

【文章生成編】「ありきたり」からのステップアップ

Beforeプロンプト: 新しい缶コーヒーのキャッチコピー。ターゲットは30代男性で、仕事中に飲むイメージ。

「切り替えの一杯、次の一歩。」
「集中は、ここから始まる。」
「あとひと踏んばりに、効く一杯。」

ターゲットや利用シーンは少し伝わりますが、商品の具体的な特徴(持続する集中力、すっきりした後味)や、どんな感情に訴えたいか(トーン)が不明なため、どこかで見たことがあるような、ありきたりで印象の薄いキャッチコピーが並びがちです。

 

Afterプロンプト(改善後): あなたはプロのコピーライターです。30代の忙しいビジネスパーソンをターゲットにした、新しい缶コーヒーの広告用キャッチコピーを5つ提案してください。特徴は「持続する集中力」と「すっきりした後味」です。トーンはウィットに富み、励ますような感じでお願いします。

「集中は、長持ちする方がカッコいい。」
「あと3時間の集中力、ここにあります。」
「タスクは山積みでも、気持ちは澄み切る。」

商品の独自性である「持続する集中力」や「すっきりした後味」という具体的な情報と、「ウィットに富み、励ますような」というトーンの指示が加わったことで、コピーの解像度が劇的に向上しました。「あと3時間の集中力」のように具体的なベネフィットを提示したり、「気持ちは澄み切る」で後味の良さを表現したりと、ターゲットの心に響く、ユニークで実践的なキャッチコピー案が生まれています。

 

やってはいけないNG例:AIを混乱させるプロンプト

 

最後に、良かれと思ってやりがちでも、実はAIを混乱させてしまうNGプロンプトの例をいくつかご紹介します。

 

曖昧で主観的な言葉を多用する

NG例: もっといい感じに、感動的で最高の絵を。 なぜダメか? 「いい感じ」「感動的」「最高」は人間の主観であり、AIには解釈できません。 改善案: 夕焼けの光を浴びて、キャラクターが涙を流している感動的なシーンを、もっと劇的な構図にしてください。

 

矛盾した指示を入れる

NG例: 静かで落ち着いた雰囲気の、賑やかなお祭り。 なぜダメか? 「静か」と「賑やか」は矛盾しており、AIはどちらを優先すべきか混乱し、意図しないものが自動生成されることがあります。 改善案: お祭りの後の静けさが漂う夜の境内を描いてください。

 

ネガティブプロンプトの注意点

NG例: 車を描かないでください。 なぜダメか? かつては多くのAIが苦手とする指示でしたが、最新の主要ツール(Midjourney, Stable Diffusionなど)では「ネガティブプロンプト」機能が正式にサポートされており、非常に有効です。ただし、この機能がないAIや、対話型AIに文章で指示する際には、依然として肯定的な表現を使った方が意図が伝わりやすい場合があります。 改善案1(ネガティブプロンプト機能がないAIでも使える方法): 「乗り物のない、自然豊かな風景を描いてください。」 改善案2(ネガティブプロンプト対応AIで活用できる方法): 「プロンプト: a beautiful natural landscape / ネガティブプロンプト: car, vehicle, building」

 

一度に多くのタスクを詰め込みすぎる

NG例: この市場について調査して、ターゲット層を分析して、SNS戦略を立案して、投稿文を10個作って。 なぜダメか? 一度に複雑な要求をすると、AIはそれぞれのタスクの質を十分に担保できません。 改善案: タスクをステップに分解し、「まず市場調査をしてください」「次に、その結果を元にターゲット層を3つ定義してください」と、一つずつ対話を進めましょう。

 

まとめ:プロンプトはAIとの対話。育てていくスキルです。

 

今回は、AIの力を最大限に引き出すための「プロンプトエンジニアリング」について解説しました。

重要なのは、プロンプトとは単なる「命令文」ではなく、AIとの「対話」そのものだと理解することです。従来のツールとは異なり、導入後も対話を通じて性能を引き上げていくことができます。最初から完璧なプロンプトを作ろうと気負う必要はありません。まずは簡単な指示から始め、AIからの返答を見て、少しずつ修正を加えていく。その試行錯誤のプロセスこそが、あなたのイメージを具体化し、AIをあなただけの最強のアシスタントへと育てていく道筋です。

この記事で紹介したテクニックは、あなたのクリエイティブ戦略における強力な武器となるはずです。ぜひ、今日からあなたの「新人アシスタント」であるAIに、少しだけ丁寧で具体的な指示を出してみてください。最新のAIサービスを使いこなせば、これまで不可能だった表現も可能になり、驚くような成果を生み出す手助けをしてくれるでしょう。プロンプトの表現方法は進化し続けるので、最新のモデルやツールの仕様を確認することも大切です。

 

【シリーズ完結】AIと創造性の旅路を振り返る

全3回にわたり、AIとクリエイティブの旅にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。最後に、これまでの歩みを振り返ってみましょう。

 

【第1回】 AI活用の全体像と可能性

最初の記事では、AIがクリエイティブ業界にもたらす変化、画像や文章を生成する基本的なAIの種類と、AI時代に求められるクリエイターの心構えについて解説しました。「AIって何ができるの?」という最初の疑問にお答えしています。
>> 第1回の記事『AIは敵か味方か?~』をもう一度読む <<

 

【第2回】 具体的なAIツールの徹底比較

次のステップとして、数あるAIツールの中からあなたに最適な「相棒」を見つけるため、主要な画像・文章生成AIを徹底的に比較。それぞれの個性や得意なこと、選び方のポイントを、実践的なレビューと共にお届けしました。
>> 第2回の記事『もう迷わない!AIツール比較~』をもう一度読む <<

 

【第3回】 プロンプトエンジニアリング入門(今回の記事)

そして今回の記事では、選んだツールの力を最大限に引き出すための具体的な「対話術」、プロンプトエンジニアリングの基本と実践テクニック、そして避けるべきNG例までをご紹介しました。

このシリーズを通じて、AIはクリエイターの仕事を奪う脅威ではなく、私たちの創造性を拡張し、制作活動を支援してくれる強力なパートナーであることを感じていただけたなら幸いです。画像やテキスト、簡単な動画コンテンツの制作効率は、このテクノロジーによって飛躍的に向上します。特に広告業界のようなスピード感が求められる業務では、AIは欠かせない存在になるでしょう。

AIという名の新しい絵筆やペンを手に、あなただけの素晴らしい作品を生み出していくことを心から応援しております。

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