プロンプトエンジニアリングは次のステージへ。AIクリエイティブとの向き合い方をアップデートする。
コラム

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プロンプトエンジニアリングは次のステージへ。AIクリエイティブとの向き合い方をアップデートする。

プロンプトとの向き合い方は、この1年でどう変わったか

前々回の記事では、AIがクリエイティブ業界にもたらす変化や可能性について、前回の記事では、数あるAIツールの中から目的に合った「相棒」を見つけるための比較レビューをお届けしてきました。

そして今回は、実際にAIを使いこなすうえで欠かせない「プロンプトエンジニアリング」について、2026年現在の実務感も踏まえながら整理していきます。

こんな実感はありませんか?

「あれ、最近そんなに細かくプロンプトを書き込まなくても、ちゃんと意図が伝わる気がする」
「昔覚えた”呪文”みたいなテクニック、今も本当に必要なんだっけ?」

その感覚、実は正しいです。AIの進化スピードはすさまじく、わずか1年前の常識が、もう更新を求められています。

この記事では、「プロンプトエンジニアリングはもう不要なのか?」という素朴な疑問に向き合いながら、2026年現在、画像生成・コピーライティングそれぞれの現場でAIとどう付き合うのがいいのか、実務目線でお届けします。3回シリーズの完結編として、これまでの内容も振り返りながら見ていきましょう。

 

プロンプトは不要になったのではなく、役割が変わってきた

まず、多くの人が感じているこの変化の正体から整理します。

以前のAIは、『一つずつ順番に考えて、答えを出してください』のように途中の考え方を示すよう伝えないと、精度の高い回答を返すのが苦手でした。ところが最近のAIは、そうした指示をしなくても、文脈から自動的に汲み取って動いてくれる場面が増えています。ただし、複雑な推論や多段階の情報整理が必要なタスクでは、今も手順を明示した指示が有効なケースは残っています。

つまり、プロンプトを工夫する意味がなくなったわけではありません。AI自体の基礎的な性能が上がったことで、特に工夫しなくても、それなりに良い答えが返ってくるようになった、ということです。簡単な質問に答えてもらうくらいのタスクなら、工夫してもしなくても差は小さくなっています。ただし、長い文章を書いてもらう、決まったフォーマットで出力してもらう、細かい条件を守ってもらうといった難しいタスクでは、今もプロンプトを工夫した方が、結果に差が出やすい傾向があります。

ただし、これは「AIとの向き合い方を考えなくていい」という意味ではありません。むしろ大事なのは、やりたいことをどれだけ解像度高く言葉にできるかという、テクニックよりも一段上のスキルです。ここから、画像生成とコピーライティング、それぞれの現場でこの変化がどう表れているのかを見ていきます。

 

画像生成、今はこう付き合う

大事なのは「呪文」じゃなく「伝える中身」

画像生成AIというと、「特別な言葉の並べ方」や「専門的な構文」が必要というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし実際に現場で使ってみると、本質はもっとシンプルです。

画像生成でAIに伝えるべきなのは、以下のような要素です。

【1】モチーフ:何を描きたいか
【2】背景:どこにあるか、何色にするか
【3】構図:どんなアングルで見せるか(アイソメ、横長など)
【4】色:参考にしたいカラーがあれば、それを共有する
【5】トーン:かっちりしているのか、親しみやすいのか
【6】用途:どこで、どう使う画像なのか

これらは、実は同僚やデザイナーに「こんな画像がほしい」と説明するときに、普段から自然と伝えている内容そのものです。自然な言葉で伝えるだけで十分なケースは増えていますが、ツールによっては構文の整理やパラメータ指定が今も効くこともあります(この違いは後ほどコラムで触れます)。まずはいつもの説明の粒度で伝えてみるのが、今の実感に近い付き合い方です。

実例:BtoBのプレゼン用ヒーロービジュアルを頼むとき

たとえば、クライアント向けのプレゼン資料で使うWebサイトのヒーローイメージを、AIに作ってもらうシーンを考えてみましょう。

Beforeの伝え方
「オフィスで働く人のイメージ画像がほしい」

これだけでも、AIはクオリティの高いイラストを生成してくれます。ただし、具体的な指定がないため、構図やトーンといった方向性はAIの解釈に委ねられる形になり、「イラストの出来は良いけれど、狙った雰囲気とは違うものが出てくる」という「AI任せ」の結果になりがちです。

Afterの伝え方
「BtoBのビジネスっぽいかっちりした雰囲気だけど、親近感もあるトーンで。アイソメの構図で、色はブルー基調でポイントにオレンジ。横長で、背景は白。Webページのヒーローイメージとして、プレゼン用のラフとして使いたい」

トーン・構図・色・背景・用途が一通り伝わっているため、AIは意図を汲み取った画像を返しやすくなります。これは特別なプロンプト構文ではなく、普段の会話の延長です。「相手に説明するときと同じ粒度で伝えればいい」と捉えると、ぐっとハードルが下がるはずです。

実際にこの2つの伝え方で生成してみると、違いははっきり出ました。Beforeは、東京タワーが見えるオフィスで働く様子まで丁寧に描き込まれた、クオリティ自体は高いイラストでした。ただ、BtoBらしい「かっちりした信頼感」や、ヒーロー画像としての構図・トーンまでは狙って出せておらず、あくまで「AIが自由に解釈した、よくできたイラスト」という止まりです。一方Afterは、アイソメ構図・配色・トーンまで指定したことで、そのままWebサイトのヒーロー画像として使えそうな、狙い通りの仕上がりになりました。

AIラフを、次の工程につなげる

ここで大事なポイントがあります。AIで生成した画像をそのまま最終成果物として使える場面も増えてきていますが、企業サイトや広告、クライアントワークにおいては、品質・権利・ブランドトーンの確認が必要になります。ツールや契約条件、用途によっては最終利用も可能ですが、ルールが整備されていく過渡期にある現状では、ラフや方向性確認として使う方が無難なケースが多いというのが実務上の感覚です。

理由は主に2つあります。ひとつは、画像そのもののクオリティやディテールの精度。もうひとつは、生成AIをめぐる著作権や利用規約が、まだ発展途上のテーマだという点です(この点は後ほど改めて触れます)。

そのため実務では、AIで作った画像は「ラフ・方向性の提示」として使い、次の工程につなげる、という使い方が現実的です。

【1】イラストレーターへの指示書として使う
AIラフを「こんな構図・トーンでお願いします」という指示書代わりにし、実際の線画・着彩はイラストレーターに依頼する。

【2】ストック素材選定の方向決めに使う
AIラフで方向性を固めたあと、近い構図・雰囲気の素材を探し、トリミングや色調補正で寄せていく。

【3】撮影ディレクションの共有資料として使う
人物やプロダクトが絡むビジュアルは、AIラフをカメラマンやスタイリストへの共有資料として活用する。

実際に弊社でも、大手企業向けのプレゼンでAIラフを活用したことがあります。方向性の提示スピードが明らかに早くなっただけでなく、デザイナーでなくてもAIラフを使って複数パターンの方向性を用意できるようになったことで、デザイナーのクリエイティブ視点だけに頼らない、幅のある提案が可能になったという手応えがありました。

「AIで完成品を作る」のではなく「AIで方向性を固めて、次の工程を迷わず進められるようにする」。これが、今の画像生成AIとの現実的な付き合い方だと言えそうです。

【コラム】プロンプト自体をAIに作ってもらうのは意味がある?

「Firefly用にプロンプトを作って」「Nano Banana用に」(Googleの画像生成機能の通称。正式にはGeminiの画像生成モデルを指します)といったように、AIにプロンプトそのものを作らせる使い方を耳にすることがあります。これは有効なのでしょうか。

結論から言うと、ツールの性質によって答えが変わります

会話を解釈してから画像を生成するタイプのツール(Nano BananaやChatGPTの画像生成機能など)では、あまり意味がないことが多いです。これらのツール自体が、すでに「自然な言葉を解釈して絵作りに必要な情報に変換する」という仕事を裏側でやってくれているため、二度手間になりがちです。直接会話した方が早いでしょう。

一方、キーワードを整理して伝える構文に強いツール(Midjourneyなど)では、話が別です。こうしたツールに向けて、頭の中にあるイメージをAIに一緒に整理してもらうのは、「言いたいことはあるけど、うまくまとまらない」ときの壁打ち相手として有効です。またチームで制作する場合、毎回同じトーン・色・構図の型を含んだプロンプトのひな形をAIに作らせておくと、誰が作っても同じ方向性の画像に近づけやすくなります。

 

コピーライティング、今はこう付き合う


4つのステップは今も有効。ただし位置づけが変わった

前回の記事で紹介した、文章生成における4つのステップ(役割・目的と文脈・出力形式・制約条件)は、今も基本として活用できます。

【1】役割を与える
【2】目的と文脈を明確に
【3】出力形式を指定する
【4】制約条件を加える

ただし、その意味合いは少し変わってきています。以前は「精度を上げるための必須テクニック」という位置づけでしたが、最近では、単に「あなたはプロです」と役割を与えるだけでは、回答の正確性そのものが大きく上がるとは限らない、という見方も出てきています。

一方で、文体やトーンを安定させるという点では、今も明確に効果があります。「あなたはプロのコピーライターです」と伝えることは、精度を底上げするというより、狙った語り口・視点に寄せるための道具として、その主な効用が変わってきている、と捉えるのが実態に近いようです。

実例:キャッチコピー、Before / After

Beforeプロンプト
「新しい缶コーヒーのキャッチコピーを考えて。ターゲットは30代男性で、仕事中に飲むイメージ」

ターゲットや利用シーンは伝わりますが、商品の特徴(何が強みなのか)やトーン(どんな感情に訴えたいか)が不明なため、どこかで見たことのある、印象の薄いコピーになりがちです。実際に出してみると、こんな案が並びます。

「一杯で、仕事のギアを上げる。」
「今日も一本、缶コーヒー。」
「頑張るあなたに、ひと休み。」

Afterプロンプト
「あなたはプロのコピーライターです。30代の忙しいビジネスパーソン向けに、新しい缶コーヒーの広告キャッチコピーを5つ提案してください。特徴は『持続する集中力』と『すっきりした後味』です。トーンはウィットに富み、励ますような感じでお願いします」

商品の独自性と、狙いたいトーンが加わったことで、コピーの解像度が上がります。

「集中力、うっかり伸びる。」
「後味はスッと、集中はずっと。」
「3時間先まで、頭は冴えてる。」
「がんばりすぎたご褒美に、すっきり一杯。」
「しつこいのは仕事だけでいい。」

Beforeは、他の商品に差し替えても成立してしまいそうな没個性なコピーですが、Afterは「持続する集中力」を時間軸で具体化したり、「すっきりした後味」を対比で見せたりと、商品の特徴とウィットの両方が効いています。ここでの「あなたはプロのコピーライターです」は、精度を底上げする魔法の言葉というより、トーンの方向づけをする道具として機能している、と捉えるのが正確です。

AIの下書きを、コピーライターがどう仕上げるか

画像生成と同じく、コピーライティングにおいてもAIの出力をそのまま最終稿として使うのではなく、壁打ち・下書きの段階として活用するのが現実的です。

AIに複数パターンのたたき台を出してもらい、そこから経験を持つコピーライターが、ブランドのトーンや文脈、微妙なニュアンスを調整して仕上げる。この「AIで発散、人で収束」という流れは、画像制作の「AIでラフ、人で仕上げ」という流れとちょうど鏡合わせの関係になっています。

弊社で依頼したコピーライターに聞くと、AIの文章は「なんとなく意味は通るけれど、輪郭がぼやけている」と感じることが多いといいます。たとえば、AIが出した「公式ホームページは『信頼の拠点』です」という一文を、「公式ホームページは『店舗の信頼を裏付けるための拠点』です」と手直しする、というように、抽象的な言い回しを具体的な意味に落とし込む作業が発生するそうです。この「わかりそうでわからない」文章の手直しには、意外と時間がかかります。だからこそ、指示の出し方を工夫することで、AIが出す時点である程度の具体性を持たせられないか、という試行錯誤も続いています。

なお弊社では、AIの文章をもとにコピーライターが手直しをしたあと、最後にAIでキーワードなどのチェックを行う、という工程を制作フローに加えることもあります。AIを起点にしつつ、人の目とツールでの確認を重ねることで、精度を担保するフローを実践しています。

【コラム】「あなたはプロのライターです」は本当に効くのか

この問い、実はAI界隈でも意見が割れているテーマです。「もう不要」という意見もあれば、「トーン調整には有効」という意見もあり、専門家の見解も年単位で変わってきています。

現時点で言えそうなのは、精度・正確さを底上げする効用よりも、文体やトーンを安定させる効用の方が主役になってきている、ということです。「魔法の呪文」としてではなく、「トーンを整えるための道具のひとつ」くらいの距離感で使うのが、今はちょうどいいバランスかもしれません。

 

画像もコピーも、共通する権利の注意点

AIを活用するうえで、避けて通れないのが権利まわりの話です。ここは技術の進化とルール整備がまさに追いかけっこをしている、発展途上のテーマです。加えて、日本・米国・EUなど、国や地域によっても解釈や運用の違いがあります。そのため、断定的な「これはOK、これはNG」という書き方は避け、現時点でわかっていることを事実ベースでお伝えします。

画像について

トリミングや色調補正、複数の素材を組み合わせる合成など、昔からデザインの現場で行われてきた手法は、素材のライセンス範囲内であれば基本的に問題になりにくいものです。一方、生成AIによる画像の合成・加工(生成塗りつぶしなど)については、素材提供サービスによって扱いの線引きが分かれ始めています。「ラフ・プレゼン段階ではAIを積極的に使い、クライアントへの納品物や公開物は人の手を通す」という運用は、今の過渡期において現実的な選択肢のひとつと言えそうです。

なお、ツールによって商用利用の安全性には差があります。たとえばAdobe Fireflyは、ライセンス許諾済みの素材やパブリックドメインのコンテンツのみを学習に使い、有料プランでは著作権侵害を主張された場合の補償制度も用意されています。こうしたツールは、他の生成AIに比べて最終成果物としての利用がしやすいと言えそうです。

ただし、ツール側が商用利用や最終成果物としての利用を許可していても、それをそのまま使ってよいかどうかは別の話です。発注元の企業やクライアント自身が、社内ガイドラインで生成AIの利用を制限しているケースもあります。ツールの規約とあわせて、実際に取引先の運用ルールも確認しておくと安心です。

文章について

生成した文章についても、既存の著作物と表現が似通ってしまうリスクはゼロではありません。特に構成や言い回しをそのまま踏襲してしまうケースには注意が必要です。コピーチェックツールなどで一致率を確認する工程を、制作フローに組み込んでおくと安心です。

なお、これらは一般的な情報提供を目的とした内容であり、個別の利用シーンについての最終的な判断は、弁護士など専門家にご確認いただくことをおすすめします。また、生成AIをめぐるルールや各サービスの規約は今後も更新され続けることが見込まれます。ここでの記載はあくまで執筆時点の情報であり、実際に運用する際は、必ず最新の規約・ガイドラインをご確認のうえご活用ください。

 

まとめ:ラフ・壁打ちは大胆に、仕上げはプロの手で


今回は、画像生成・コピーライティングそれぞれの現場で、AIとの向き合い方がこの1年でどう変わってきたのかを整理しました。

プロンプトを職人技のように磨き上げる時代から、「やりたいことを、いつもの言葉で伝えればいい」時代へ。AIが賢くなったことで、私たちに求められるハードルはむしろ下がってきています。

一方で、AIが作ったものをそのまま完成品として使うには、まだ品質・権利・ブランドトーンの確認が必要な場面が多いのも実情です。だからこそ今は、ラフや壁打ちは思い切ってAIに任せ、最終的な仕上げはデザイナーやコピーライターといったプロの手に委ねる。この役割分担が、今の時点でもっともバランスの取れた付き合い方だと言えそうです。

AIは、クリエイターを完全に置き換える存在ではなく、役割を再編しつつある存在だと捉えるのが実態に近いようです。下書き・量産・方向性の提示・ラフ作成といった領域は、すでにAIが得意とするところです。一方で、最終判断・品質管理・ブランドトーンの調整・文脈理解といった部分は、引き続き人が担う領域として残っています。大切なのは、AIに任せる部分と、人が判断する部分を見極めながら使うことです。デザインやコピーライティングにおけるAI活用について、もっと詳しく知りたい、相談してみたいという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

【シリーズ完結】AIと創造性の旅路を振り返る

全3回にわたり、AIとクリエイティブの旅にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

【第1回】AI活用の全体像と可能性
>> 第1回の記事をもう一度読む <<

【第2回】具体的なAIツールの徹底比較
>> 第2回の記事をもう一度読む <<

【第3回】プロンプトエンジニアリング、次のステージへ(今回の記事)

このシリーズを通じて、AIはクリエイターの仕事を奪う脅威ではなく、私たちの創造性を拡張し、制作活動を支援してくれる存在であることが伝わっていれば幸いです。AIという道具とどう向き合っていくか、私たちも実務の中で模索を続けながら、今後もお役立ち情報をお届けしていきます。

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